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(サンケイ Webより引用)
【円・ドル・人民元 通貨で読む世界】弱い円は世界の不安

 京都ではアジア通貨危機の再来に備えた外貨準備の相互融通強化で関係国が合意したが、市場介入で特定地域の危機を防ぐという考えは、市場がグローバル化した現在で通用するはずがない。危機再発不安の原因は円が外資系ファンドの手で調達されてはたたき売られ、アジアに限らず世界の新興国市場に流入してバブルを引き起こすことだ。日本は円安の安逸さにおぼれず「強い円」をめざすべきだ。

 「1強(ユーロ)2弱(ドル、円)」と言われるが、実際には世界の主要通貨は円「1弱」である。通貨の実際の実力を示す実質実効相場でみると、円は4月までの2年間で実質実効相場が15・5%下落したのに対し、ドルは3%しか下がっていないし、主要通貨総合平均でドルは横ばいである。円安の追い風で2006年度日本の全世界への輸出は前年度比13・4%増(05年度は同10・6%増)。内訳は中国向け21・2%増(15・5%増)、米国向け11・1%増(11・2%増)、欧州連合(EU)向け13・6%増(4・5%増)と、中国向けを筆頭にまさに輸出花盛りである。

 中国の人民元切り上げ(05年7月21日)以降、円安はユーロやドルに対してばかりではない。人民元、韓国ウオン、タイ・バーツなどアジア通貨に対して大きい幅で振れている。中国は米国から人民元切り上げ圧力を受け続けている。「管理変動相場制」を建前にして切り上げ幅を少なくするよう外国為替市場に介入を続けているが、米議会からは人為的な人民元相場の誘導として非難されている。米議会は円安も批判するが、ポールソン財務長官やバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「日本は為替市場に介入していない」と日本を擁護している。

 人民元の陰に隠れた円安のおかげで、企業は輸出で為替差益を稼ぎ、現地法人は現地通貨建ての利益を円換算で増やせる。1円円安になるたびに、ホンダは年間で150億円、松下電器産業は48億円、ソニーは125億円利益が増えるという。

 円安の主因は、円キャリー取引である。ヘッジファンドなど投資機関が依然として超低金利の円資金を日本の金融機関から調達して、金利や利回りの高い通貨で運用する。要するに円を肝心の日本で運用せずに、米国やアジア、ユーロ周辺国など新興国の通貨に換えて運用する。条件が悪くなったら、円が大量に買い戻され、急激な円高逆流へと変じる。すると、日本の製造業競争力は一瞬にして崩れるし、世界の金融市場も揺れる。

 円に対しての上昇幅がユーロよりも大きい通貨にタイ・バーツがある。今からほぼ10年前の1997年5月、ヘッジファンドによるバーツ売りをきっかけにアジア全域が通貨危機に見舞われた。危機直前のバーツの対円相場は2年間で約35%上昇していた。今回もバーツはやはり同程度上昇している。為替市場の均衡は突如崩れる。投機売りに対抗するため、日本を含むアジアが外貨準備を融通し合う「チェンマイ・イニシアチブ」があり、京都での会合で多国間の枠組みとすることで合意したが、市場は外国為替にとどまらない。タイのように資本の流入を規制しても、いつでも売り買いできる株式市場の規制には限度がある。グローバル化が進んだ今、何も波乱が起きるのはアジアにとどまらない。円キャリーの影響で沸き立つ市場は東欧、トルコなど世界に広がっている。

 円を世界経済のリスク通貨ではなく、安定通貨にする国際的な役割を日本が自覚しないと、円安はこのまま放置され、危機の芽がふくらむばかりだ

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